今月の『佼成』会長法話のテーマは、「父母あればこそ」です。
親から大事に育てていただいた思い出、欲しいものを買ってもらったり、遊園地に連れて行ってもらったりした思い出が多く残っている方があるでしょう。
反対に親から厳しく育てられた記憶や辛い経験の思い出が浮かんでくる方もあるかもしれません。
私は、経済的に苦しい中、母親が昼は行商、夜は着物の仕立ての内職をして育ててくれたという記憶があり、早く親を楽にしてあげたいという思いを強く持っていました。現実は問題をおこして苦労ばかりかけていたので、母は暗い表情をしていることが多かったように思います。
そんな母にとって、佼成会の教えやサンガとのご縁が救いであり、希望であり、生きる力になっていたのではないかと想像しています。
皆さんも親についての大事な記憶があるはずです。そうしたことを思い起こし、あの時、親はどんな気持ちだったのだろうかと想像してみることも親孝行の一つではないかと思います。
「親への孝行ということは、単に自分を産んでくれた一人の親を大事にするということではなくて、自らの親への奉仕を通して、実は宇宙の根本生命に帰一することにほかならない」(14頁1行)
私は、この言葉が最も大事だと受けとめました。
最新科学の理論によると、宇宙は138億年前、極めて小さな「点」のような状態でした。それが、ある時「ボン!」と大爆発し、すごい速さで膨張しはじめたのがビックバンです。
その後も宇宙はドンドン膨らみながら冷えていき、光や空気のもとになる小さな粒子が生まれ、その粒子が集まって星や銀河ができ、今のような広大な宇宙になったと言われています。私たち人間もこの粒子の集まりから生まれたもので、宇宙の分身ということになります。
いったいどんな意思や力がはたらいてこのような広大な宇宙をつくり出せたのでしょうか?それは人知をこえた神秘のはたらきとしか言いようがありません。それを宇宙の根本生命と言っているわけですが、温かみが感じられるように「神さま」とか「仏さま」と呼んでもいるのです。
すると、私たちは皆「宇宙の子」「神の子」「仏の子」と言えるのではないでしょうか。そこには国や人種、民族や宗教の違いをこえて、すべての人間は一つです。「人類みな兄弟!」という言葉がありましたが、それは真理なのです。
また、小さく弱々しいと感じていた私たちのいのち、実は宇宙の根本生命の分身であり、大きな神秘の力を有していると思うと、自然と大きな力がみなぎってくるように感じますがいかがでしょうか。
本会の教えを分かりやすく三つにまとめると、「親孝行」「先祖供養」「菩薩行」と教えていただきます。本当の親孝行とは、単に自分の親への感謝にとどまるものではなく、いのちの大本である宇宙の根本生命に感謝することです。
そして、「自分」と「親」と「先祖」と「宇宙の根本生命」が、すべて“一つのいのち”につながっていることを認識することだと思います。
合掌
2025年5月1日
立正佼成会文京教会
教会長 近藤雅則