入り五目、中ぼた餅、明け団子

私がまだ学生の頃、お彼岸が来るたび母は「入り五目、中ぼた餅、明け団子」と言いながら手作りの料理を仏前に供えていました。
私が結婚してからは、お彼岸のおはぎは母と二人で小豆を煮て、あずき、ごま、きな粉の三種類を作り、仏前に供え、家族で頂くのが年二回の楽しみでした。
その頃はご先祖さまに喜んで頂くためにお供えするものとだけ思っていました。

ある時・・・・もう50年くらい前のことですが、聖堂の御命日で当時の足立教会の教会長さんからお説法を聞かせて頂きました。先祖を大切にしてご供養することがいかに尊いことか、お墓をきちんとお守りすることなど体験を通して得た功徳をいろいろとお話下さいました。
そんなだいぶ前のお話を何故忘れられないかというと、そのお話の中に、母がよく言っていた「入り五目、中ぼた餅、明け団子」が出てきたからです。驚きました。

教会長さんはその意味をお話しくださいました。
お彼岸に入る前は、自分のことにとらわれ、ご先祖さまのことも忘れがち。自分の心の中は、いつの間にか不平不満でいっぱい。ちょうど五目ご飯のようにいろんな思いが混ざっています
お彼岸に入ると、さすがにご先祖に喜んで頂こうとあれこれ作ってお供えをして、中日を迎える頃なると、心は煩悩に覆われていても、心の奥はどこか清々しい気持ちになっています。
まるで、ぼた餅のようにあんこに覆われていても中心は真っ白な心になっている
そして、彼岸明けの頃には心底清々しい気持ちになっているのです。まるで白いお団子のように
真心からの先祖供養は私たちの魂を浄化してくださると、たとえで心の変化を話して下さいました。

お彼岸は、煩悩にとらわれているこちらの岸から六波羅蜜の橋を渡って、悟りの世界(彼岸)に近づいていくためのご先祖さまへの感謝とご供養の尊い行事であることも教えて頂きました。
ご先祖さまに感謝をお供えをするとともに自分の心を整える努力を日々積み重ねていきたいと心に刻みました。

我が家ではお彼岸入りの日は五目ご飯、中ごろにおはぎ、白い団子は七日間(心の目標として)そして毎日ご先祖さまが好きだっただろうと思うものを作って、ささやかにお供えしています。
入り五目、中ぼた餅、明け団子」は、母が伝えてくれた大切な言葉です。

三村浩代